びぼうぶろぐ。

基本的に自分の備忘録のためですが、同時にどなたかのお役に立てればと思いながら書いています。

「中国の行動原理 国内潮流が決める国際関係」益尾知佐子

「中国の行動原理 国内潮流が決める国際関係」益尾知佐子

世の中では、アメリカのトランプ大統領は民主主義の敵だ、
みたいな感じで言われるのですが、
私の中では中国の方が、民主主義に対する脅威に感じます。
(むしろトランプは、ある意味紳士的ではないゆえに
 中国に唯一強気になれている政治家、って気もする)

…といっても中国人が悪い、ということを言いたいわけではなくて、
彼らの行動心理と、民主主義との相性があんまりよくないように見えて、
そこにはなんか根本的なもの、
個人の道徳心とは別に、染み付いてしまった考え方の癖のようなものがあるように思えてならないのです。

中国人との個人的体験を書いた本も読んだことがあったが
「人口が多いから競争が激しい」とか
中華思想が根付いている」
愛国心教育一人っ子政策のせいで自己中心的になっている」
などという説明だけではなにか釈然としないものを感じていました。

そこで詠んでみたのがこの本です。
この本は、国際関係論の専門家が書かれたもの。
生まれが九州の方で、幼いころから大陸の方々とも交流があり、
祖父母も大陸から引き揚げてこられた方々だそうで、
中国には親しみを感じていて、
それが中国研究の原点になっておられるそうです。

彼女は「専門的な説明を度外視して、できるだけ直感で心がけた」そうで、
その通り、彼らの心の奥底に流れる彼らなりの世界観、ストーリーが描かれていて、
なるほど、中国人って自己中に見えるけど、それなりに理由や背景があるんだな、
ということが分かりました。
単なる客観的な中国分析本ではない感じになっています。

以前、アメリカ右派の方々について書かれた
「壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き」(A.R.ホックシールド
という本を読んだことがあるのですが、
この本も、彼らの視点から見た世界観が描かれている。
この本を読む前は、アメリカ右派ってなんであんな非科学的なキリスト教世界観を信じているんだろう、とか
なんでマイノリティや黒人に厳しいんだろう、と思っていたが
彼らなりの言い分があるんだな、と分かった、それと同じ感じです。

単に筆者の個人的体験の話を羅列するだけではなくて、
中国の家族制度、歴史なども交えて分析されており、
文庫本ながらかなり読みごたえがありました。

というわけで印象に残ったところを挙げてみたいと思います。

〇中国人から見た世界
 最初に筆者は、中国人が世界をどう見ているのか、を分析しています
 (これは1章に当たるもので、前書きでは筆者は「時間が無い方は読み飛ばしてくれていい」とあるんですが、
  いやいや、これは読み飛ばさないことを強くお勧めします)
 
 筆者によると、中国人の世界観の特徴は3つ挙げられるそうです
 ・「中華帝国」の喪失感
 ・強烈なリアリズム
 ・共産党の描く世界観

 ・「中華帝国」の喪失感
  よく日本では、中国人の海洋進出について
  「中国人には、中華思想(自国中心主義、自分の国は大きくて偉大という幻想、対外膨張意欲がある) 
   があるからだ」 
  という説明がなされるが、筆者によれば、中国人に「中華帝国」復活を望む人などいない。
  どちらかというと「中華帝国」へのノスタルジア
  あの頃はよかったのに…みたいな感覚(かといって取り戻そうという気は別にない)があるようです。

  近現代の価値観からすると、  
  国家同士の関係の在り方とは、  
  それぞれの国家が主権を持ち、国家同士が対等に話し合う、…というもの。
  しかし、「中華帝国」(紀元前の秦の時代から始まる皇帝中心の帝国)では
  そこまで国家の主権というものはきちんとしていない。
  中国が完全支配、というわけではないが、
  他国に対して、なんとなく上下関係のある支配関係になっている(しかし中国は支配とは思っていないが)
  
  もちろん当時中国の近隣諸国には国家的なものはあったのだが、対等なものではない。
  当時、中国は巨大な帝国だったので、中国に攻め込まれたら中国の領土にされてしまう。
  だから近隣諸国は、中国に貢物を送り、自国の主権を認めてもらう、という対応を取った。
  これは、中国に攻められないようにするのもあったが、
  各国の当時の指導者が、国民に、中国からお墨付きを得ているよ、というアピールをする目的もあった
 
  一方中国の方は、
  自国に従う国は中国を敬っている、と考え、品物を寛大に与えた
  自国に歯向かう国は中国を軽視している、とみなし、懲罰を与えた

  中国からみた当時の世界観は中華思想だった。
  つまり、皇帝を中心とした同心円的な支配の構図で、
  皇帝の外に官僚が、その外に国民、その外に属国、その外に交易国(属国ではないが貿易はする)、
  その外は交流のない野蛮な国、という認識。
  彼らからすると、他国は自分に従う国であって、自分の国を相手にしない国は、文化を理解しない野蛮な国だった。
   
  だから彼らにとってみれば、他国は自分より格下だが、
  彼らが武力で従わせたのではなく、
  他国が中国の文化に感銘を受け、ひれ伏したのだ、と考えた。
  (とはいえ、アジアの他国からすると違うようですが。
   中国は、雲南ベトナム)や朝鮮には攻め込んで支配しているようです)

  しかし、近代になって欧米列強が進出してきた。
  列強はそれまでの他国と違い、清を崇めなかったし、そればかりか植民地にしようとした。
  中国はそれまで大将だったため、彼らの力の強さを甘く見ていた
  だからアヘン戦争に敗れ、日清戦争にも敗れた。 
 
  一方近隣諸国は、中国より強い列強を目の当たりにし、
  もう中国のことはさておいて、主権国家を急ごしらえして列強に対抗するか、
  列強の植民地に甘んじるかどちらかしか選択肢が無かった。
  つまり中国から独立するか、列強の傘下に入るかの道を取った。

  中国からすると、これは帝国主義の国々が、
  中華帝国を中心にした緩やかな秩序を急に乱暴に解体した、
  「きわめて不可解な、大きな不満の残る結果」だったと見えるそうです
  
  だから、「元の国際秩序を失った喪失感」と「帝国主義への反感」が強くあるのだそうです。
  彼らは国力の違いを自覚しているので、
  中華帝国の復活を望んでいる、というほどでもないが
  「帝国主義国」(西側諸国)のしたことには屈辱感を感じている。
  だから彼らに内政干渉を二度とさせない、という思いは強いのだそうです

  また、中国は海洋進出していることもあり、
  「対外膨張している」という批判もあるが、
  筆者によれば、中国にはそんな意図はないらしい。
  (後の方で、これは海軍の勇み足的なところがある、というようなことが書かれている)

  その証拠に、戦後領土問題があった隣国は14カ国あったそうですが、
  インドとブータンを除く国ですべて解決しているし、
  その解決時も、半分以上の面積は相手にゆずっているのだそうです。

  ただ、中華民国時代の感覚が残っているせいか、
  小国には多額の支援を大盤振る舞いして味方につけようとし、
  (アフリカなど発展途上国にはそうですね)
  力が強くて服従させられない、と見える国(アメリカとか)には強硬的になる、という傾向にはあるらしい

  ちなみに筆者によると、彼らは中華帝国時代の感覚が残っているので
  「他国から文化的にリスペクトされたい、リスペクトしているはずだ」という思いが強い。
  だからメンツを重んじるし、
  中国が他国を武力で支配した、と言われるのも、プライドを傷つけられる。

  また、アジアや発展途上国は格下だという考えが無意識にあるので、  
  他国の主権や文化にはあんまり関心が無い。
  だから、支援がその国の実情に合っているのか、には無頓着になってしまうらしい。
  (別に意地悪という意味ではなくて、我が国の支援なんだから、ありがたくないはずがない、という感覚)

 ・強烈なリアリズム
  次に、中国は「リアリズム」で動いている、ということについて。
  「リアリズム」とは、力の大小関係だけで国際関係を見る傾向のこと
  (対して、リベラリズム、は、各国の主権を尊重する)
  
  中国はこのリアリズムが強いそうですが、
  筆者によれば、欧米的なリアリズムとは少し違うのだそう

  欧米的なリアリズムの代表はホッブズの「リヴァイアサン」で
  人間は暴力的な存在だから、互いに征服しあう、と考える
  だから互いにサバイバルの為に争い合うのだ、と考える。
  自分が負けたら、単に力が弱くてサバイバルに負けたのだ、と考える。

  しかし中国的なリアリズムはもっと感情的個人的で、「自分が善、相手は悪」、
  自分がヒーロー、のストーリーを描く傾向にあるのだそうです。
  相手が手ごわければ手ごわいほど、
  相手がめちゃ悪いヤツで、陰謀を働いているんだ、と。
  自分が負けても、自分の力が至らない、と考えるよりも、悪い奴にハメられた、と考えたがる。
  …筆者はこれを「陰謀系リアリズム」と書いている

  たとえば尖閣諸島問題についても、
  中国は最近ようやく自分の領土と主張し始めた(つまり自分の領土とは思っていなかった)のに、
  「戦後日本と中国との対立を起こすために、
   わざとアメリカは、中国の領土であるはずのこの地を
   戦後日本に与え、問題を作っておいたのだ」
  というアメリ陰謀論が出たのだそうです(想像力がたくましい?)
  
  現在中国が海洋進出しているのも、
  内陸に熱心に石油パイプラインを作っているのも、
  そのうちマラッカ海峡アメリカに支配され、
  いずれ中国に石油が海洋経由で入ってこなくなる…という恐怖心があるから、なのだそうだ(これも想像力がたくましい)

 ・中国共産党の考え方
  最後に、中国の共産党の世界観も、中国に影響を与えている。

  中国共産党の世界観は、マルクス・レーニン主義に基づくものだそうです。
  マルクス主義では、人間の社会は進化していく、と考える。
  具体的には、狩猟採集社会→封建社会→資本主義社会→社会主義革命→社会主義社会、
  と発展していく、と考える
   
  この考え方からすると、現在の資本主義はまだ発展途上の段階。
  資本が富を独占し、帝国どうしが争う全然理想的でない社会。
  だから、共産党は最終的に世界革命を起こし、理想的な社会主義を実現せねばならない、と考える。
  最終目標が、「世界革命、社会主義社会を全世界に広める」なわけです。
 
  ただし、筆者によると
  「中国共産党の政治の先に、明るい未来があると信じる中国人には会ったことがない」そうです。
  つまり本当に社会主義が理想だと思っている人はまずいない。
  ただ中国共産党のやり方が、このイデオロギーで自動化されてしまっているのだそうだ。

  例えば中国共産党は、
  党大会では わが共産党は今のダメな世の中を改善し、理想を実現していくのだ、
  という理念を5年ごとに発表している。
  この際、現状に対する不満や、帝国主義に対する批判を並べている。
  逆に言うと、今の世の中はダメだよということで、自分たちの存在意義を主張している。

  ただしこれは筆者によると「なかなかトリッキー」で、
  なぜなら中国共産党は70年も続いていて、
  それなのにずっと社会が改善されていない、と言ってしまうと、
  君たち何してきたの?となる。自分たちの無能さをさらけ出すことにもなってしまう。

  だから、問題は外国にあるのだ、と言わざるを得ない。
  1950-60年代は米国、70-80年代はソ連(私は知らなかったが、ずっと中ソ対立していた)
  冷戦が崩壊したあとは日米、天安門事件が起きると制裁を加えたG7諸国と、
  常に仮想敵国をつくっている。

  筆者はこれについて、
  「中国が経済発展できたのは他国が自由を受け入れていたからなのに…」と指摘するが、

  それでも共産党は、自らの存在意義を示すために、
  西側諸国を「冷戦思考」(同盟を結ぶことをこう呼ぶらしい)「覇権主義」「強権政治」と批判する、
  というか、せざるを得ない。

  さらに、国民は、共産党のこの考え方に従う傾向にある。
  その背景として
  ・メディア統制
   自国の国防費が膨張している、ということは報道されないのに、
   他国の軍事拡大については報道されるので、
   国民は「敵対勢力に包囲されている」という危機感を持ってしまう
  ・愛国教育
   幼稚園から、歴史や政治について、共産党の意向に沿った教育がなされている
  ・インターネットの統制
  
  これらにより、より一層国民が「他国による陰謀」論に陥りやすいのだそうです。

 つまり中国の人たちの思考をまとめると、
  周りの国は悪いヤツで、自分に陰謀を働いてくる、
  実際に、列強は過去に中国を解体した…
 という思い込みで世界を見ている、というように見える。
 ある意味気の毒な国民にも思えてきます。

 では、どうしたら彼らは安心するのか。
 筆者によれば、私的な生活に関しては、豊かになって不安を持つ人は少ない。
 しかし政治的、社会的には常に不安感を持っていて、
 現実的に考えれば、それが解消される見込みはない。

 というのは、中国にとっての政治的、社会的理想とは、
  ・アメリカが近隣国との同盟関係から手を引く 
  ・日本が弱体化し、ロシア、インドも台頭しない
 …つまりローマ帝国中華帝国の共存のような、互いにテリトリーを侵し合わないような
 アメリカとの共存を望んでいる。
 しかし、これはあんまり現実的ではない。
 
 また、経済的にも効率が悪い。
 中国は対外を進出しがたっている、と誤解されがちになる。
 身の程をわきまえずに発展途上国などに大盤振る舞いしている、とも思われている。
 しかし、彼らは中華帝国のようにふるまいたいので、それも改まりそうにない。

〇中国人を規定する、伝統的家族観
 次に、「家族制度」から見た中国の分析が紹介されていました。
 これは、フランスの人口学者、エマニュエル・トッドさんの「第三惑星」という本からの分析ですが、
 トッドさんは
 「家族制度が、その国の政治や社会制度を規定する」
 という独特の説を唱えておられます。
 (ちなみにこの方「欲望の資本主義2017」に出ておられて、なかなか偏屈?というか、面白い方でした)
 
 彼の説によると、
 家族とは、人間が生まれてから初めて出会う最も基本的な社会組織である。
 一方で、家族秩序はその土地にゾンビのように生き残り、長期にわたり継承される。
 そしてそれは、家族よりも大きな組織(例えば地域、社会、政治など)の秩序にも投影される。
 それにより、家族制度は人々の「秩序はこうあるべき」という価値観を、無意識に強く規定しているのだ、と。

 そしてトッドさんは、世界各国の家族形態を分析し、7つに分類している。
 その基準としては、
 ・子が家庭を持った時、親と同居するか(権威主義)独立するか(自由)
 ・親亡きあと、子の相続は兄弟で平等か不平等か
 ・いとこ婚容認か、母系のみいとこ婚容認か、いとこ婚を認めないか、
 
 7つの分類の詳しくは本文を読んでいただくとして、ここでは日本と中国を比較のために取り上げる。
 日本は親子同居の相続不平等で、「権威主義的家族」になる。
 ドイツや韓国、北朝鮮もこれに入る。
 一方、中国は、親子同居の相続平等で、「共同体家族」になる。

 トッドさんによると、この家族形態は、その社会の政治形態と相関関係が見られるのだそうだ。
 例えば「共同体家族」は、共産主義と親和性が良い。
  具体的には、ロシア、ユーゴ、スロバキアブルガリアハンガリーフィンランドアルバニア、イタリア、ベトナムキューバなどで、歴史的に共産党政権が受け入れられた国が多い。
 
 「共同体家族」では、父親が絶対権力を持ち、その下で兄弟は平等に暮らす。
 (日本の「権威主義家族」は、父親の権力のもと、年功序列の階層的な社会)
 中国は昔は長子相続制で、「権威主義家族」だったそうですが、
 漢の時代に長子相続が廃止されて以降は、共同体家族なのだそうです。

 トッドさんによると、この「共同体家族」の特徴は「束縛」「不安定」なのだそうだ
 この形態では
 ・父親が強い権威を持つ
 ・兄弟は父親の元、連帯を求められるが、その内実は互いにライバルになりやすい
 ・兄弟の嫁は必ず他人(いとこなどは許されない)なのに、
  みんな同居しなくてはいけないので、それも内紛の種となりやすい
 ・父親の権力が強すぎると、父殺しの圧力が高まる
 ・父親亡きあとは家族の結束が弱まる
 父親の権力の元、「結束」への圧力がかかると同時に、
 兄弟同士は父亡きあとのライバル同士でもあり、「離散」への圧力もかかりやすい。
 このため、強い父親が存在しないと不安定になりやすい。

 そして、この家族制度は、会社などの組織にも反映されているのだそうです。
 
 日本の制度との比較でいうと、
 ・権威主義は父親が上で、その下に上の兄弟から序列ができており、日本の会社も同様に年功序列である。
 ・年長者は直属の部下の面倒をみる。
  このため、社長はトップにいるが、権力は少しずつ中間管理職に分担される。
 ・父親亡きあとも、長子が立場を引き継ぎ、組織形態は維持される。
 ・このためメンバー全員に組織形態を守ろうという意識が生まれ、
  危機状況時でも、それぞれの中間管理職は組織の維持のために役割をこなす。

 一方中国の場合、
 ・年功序列は薄く、メンバーは対等
 ・メンバーは他人の仕事には口を出さない(これは冷たいのではなく、互いの権限に口を出さないというマナー)
 ・社長に気に入られれば下克上もありうる
 ・このため、みんな社長の言うことは聞き、社長に気に入られようとする
 ・危機が起きた時、各メンバーどうしの連携がとりにくい
  社長への問題報告が過小になりやすい

 とはいっても中国式のやり方はデメリットばかりではなく、
 ・年功序列が無い分、各メンバーは能力次第で動ける自由がある
 ・有能なボスがにらみを利かせてしっかり役割分担させれば、組織はうまくいく
 など、いいところもあるんだそう。

 このため、中国の組織では、
 ・権力が一人に集中する、ワンマン的
 ・ボスがメンバーの役割を決めるので、逆に言えばボスに気に入られたらどんどん登用される
 ・メンバー同士は仲間というより、むしろライバル 
 ・ボスへの忖度や、時流を読む力が非常に重要になる
 特に4項目目がポイントで、これが中国の歴史のダイナミックさの原動力にもなっている。

 また、中国式の体制のリスクとして挙げられているのが
 ・ボス殺しのリスク(無能なボスの場合、革命や下克上が起きやすい)
 ・ボス亡きあと、分裂しやすい(トップが急死したとき、国家分裂の危機がある)
 ・ボスの状況次第で状況が変化しやすい、長期的見通しが立ちにくい
  (その代わり、トップダウンで決まるので、ボスに話を付けたら話が早いメリットはある)
 ・ボスに対してメンバーがイエスマンになりやすい、問題が放置されやすい
 ・ボスが無能な場合、メンバーが勝手なことをやりだす

 このため、アメとムチをうまく使い分けるこわもてのボスが必要で、
 メンバー同士には常に競争の緊張関係があるのだそうです

 …基本的にリーダーシップがあり、方向性が正しいボスがいれば、集団として力を発揮するが、
  メンバー個人同士は互いを信用してないし、自主性もないから、  
  ボスの監視が無いところでは、途端に集団の力は弱まる
  (というか、足の引っ張り合いになるからむしろマイナス?)。

〇中国国家の組織
 これを中国国家の中で見ると、
 中国共産党内部の組織にも、父(党主席)-息子(中央部内部の幹部)関係はみられるし、
 国全体の組織にも、父(党中央部)-息子(国家の組織、軍の組織、党の組織)の関係はみられる。

 父の絶対権力のもとに、息子たちがその指示を実行していくが、
 父が強ければ、息子たちは父に忖度し、その行動が過激化することもある。
 父が弱ければ、息子たちは建前上父を立てつつ、勝手な行動をとる。
 父が亡くなれば政変が起きる。
 このダイナミズムが、中国の歴史と政策を動かしている。…とみれば割と中国社会は分かりやすい。

 基本的に、中国社会のメンバーは、国内の父が自分をどう見るか、父との関係がどう見られているか、
 を基準にして行動する、
 それが国際社会との軋轢を生むこともあるようです。

 また、中国には、父ー息子関係の緊張感もあるが、
 「国家」としての中国と
 「中国共産党」としての中国、という二つの面もあるそうです。
 「国家」としての中国は、主に国務院を中心に国家間の外交を行う。
 一方で「中国共産党」としての中国は、他国の共産党と国や民間レベルで連携し、世界革命を目指している。

 この二つの顔があるので、
 国家として他国政府と協調の姿勢を見せつつ、
 中国共産党として世界革命のためにその国の共産党を刺激し、国家転覆をそそのかす…
 という相矛盾した行動をとることもある。
 これも、他国との軋轢を生む原因になることがある。
 
 …これらの分析を踏まえ、
 筆者は具体的な出来事を検証している。
 特に、中国の指導者についての記述は興味深かったです。

毛沢東
 まずは毛沢東。 
 1948年に中華民国を設立した、建国の父です。
 筆者は時間軸に沿って丁寧に書いてくださっているのだが、ポイントを書き出すと

 彼の政策は、海外や後世の人間から見ると合理的でないように見える。
 例えば対外的には
 ・建国間もないとき、まだ国の体力がない状態で、
  ソ連の呼びかけに応じ朝鮮戦争(1950)に人民解放軍を派遣
 ・1954ジュネーブ会議に周恩来を派遣し、
  国家として「第三世界」(東西冷戦のどちらの陣営にも入らない立場)の盟主として
  インドネシアスカルノ、インドのネルーと連携の姿勢を見せた
  一方で、各国の共産党に呼びかけ、革命分子を刺激している

 ・ソ連スターリン共産党の父として仰ぎつつ、
  1950年代後半、彼亡きあとは、跡を継いだフルシチョフと対立し、イデオロギー論争をした
 ・1970年代後半、ベトナム戦争では、最初は反米のベトナム労働党を支持するが、
  ベトナム労働党ソ連に近付くと、彼らと対立するカンボジアポルポト政権を支持した

 国内的には
 ・1950年代終わりから、大躍進政策(集団農業などの社会主義政策の実現)を行ったが、
  貧しい農民がたくさん生まれ、失敗に終わる
 ・1960年代、大躍進政策を批判する政敵(中には彼の恩人も含まれる)を次々つぶしていく
 ・国際協調派の周恩来なども政権の隅に追いやる
 ・1960年代、文化大革命により、政権が左傾化する
  国際協調派、穏健派の人たちが弾圧される
  
 …これらを毛沢東の立場から見ると、
 基本的に毛沢東
 「スターリン共産党イデオロギーを実現させたい」「アメリカ帝国主義は敵」
 「スターリン亡き後のソ連は自分のライバル」「父殺しの恐怖に怯えている」 
 という心情を持っている、と考えれば、彼の行動に一貫性が見えてくる。

 毛沢東は、マルクスレーニン思想の共産主義に完全に共鳴していて、
 世界革命を本気で考えていた。
 だから、イデオロギーを守るために朝鮮に派兵した。
 大躍進政策も、社会主義の現実化の一環だった。

 また、戦後、国家として「第三国」に協調したのは、
 第三国の国々がアメリカなど「帝国主義」の国を敵視していた、そこに共鳴できたからだった。
 一方、共産党として世界革命を起こす夢はあったので、
 共産党窓口をとおして各国の革命分子をあおっていた。矛盾しているが、彼の中では矛盾していなかった。

 また、スターリン亡きあとにフルシチョフソ連と対立したのは、
 スターリンという父を失った後、
 共産党の盟主の座をめぐる兄弟争いだった。
 フルシチョフは、途中から対米協調路線を取ったので、
 毛はそこが気に入らず、イデオロギー論争をし、1970年代にはソ連とかなり対立していた
 (ちなみにこの論争の急先鋒となったのが、この後紹介される鄧小平)

 世界革命を実現するためには、本来、共産党どうしとして協力し合わねばならないはずなのに、
 彼はライバル争いとしてソ連と対立した。
  
 それから国内に目を向けると、彼は「父殺し」される恐怖に襲われていた
 大躍進政策を批判する政治家、国際協調路線を進める政治家は、良識があり
 国民からも、海外からも評価される傾向にあったようです。
 本来政治家ならそういう人たちをうまく使えばいいのだが、
 毛沢東はそれを「自分の座を狙っている」と受け取り、つぶしにかかった。

 その最たるものが文化大革命で、
 これは彼の「世界革命」への夢とも相まって、政権が過激な革命思想になり、
 穏健派、国際協調派の人たちに対し、「共産党の思想を修正しようとしている」として迫害した。
 
 そしてこれらの毛沢東の行動を見て、
 国内の「息子」たち、つまり他の政治家や国民たちは、毛に忖度する行動をとるようになった
 穏健派が処罰あるいは追放されるのを見て、
 彼に歯向かえば消される、という恐怖が生まれたので、誰も毛に意見しなくなったし、
 彼の世界革命の望みをかなえるべく、
 国内や国外で過激な革命運動を(指示がないのに)起こした。
 
 だから文化大革命では、海外で革命の過激運動が起きたり、
 国内で穏健派やそれまでの資産家階級を弾圧するような、国民の行動が
 それぞれ自主的に生まれてしまった。
 みんな先を争って「潮流を読んだ」ために、誰も止められなかった
 
 筆者のヒアリングでも、
 「中国の対外行動には問題があると理解していたが、
  「党中央には意見できず」、国内政治に流されてしまった」
 という話がされていたそうです

 …文化大革命のとき、なんで誰も疑問を持たずあんなことをしていたんだろう?と思っていたんですが、
 父殺しの恐怖感、ボスに消される恐怖感などからの行動だったんですね。
 
 毛沢東は、文化大革命のあと、人々の支持を次第に失い、
 結果的に鄧小平が権力を握ることになる

〇鄧小平
 さて次はその鄧小平です。
 この方も割と不思議だった方で、今までのイメージとしては
 ・毛沢東の独裁政治の反省から、共産党を集団指導体制へと変えていった
 ・中国に市場経済を導入した
 …などのことから、割と海外には受けが良いのだが、しかし

 ・民主化は不支持、天安門事件では、民主化運動を軍力で弾圧、
  民主化を支持した政治家(趙紫陽胡耀邦)を切り捨てる
 という最悪の結果を招いている

 これも一貫性が無さそうに見えるが、彼の目線に立ってみるとそうでもない。
 基本的に彼は
 「筋金入りの共産党員、党を存続させるためなら何でもやる」「父殺しの恐怖におびえている」
 と見れば一貫性が見えてくる。
 
 彼の生涯を見るとけっこう気の毒で、
  幼少期、清国の滅亡、二度の大戦を経験している
  青年期になると、留学と勤労のためフランスに渡る
  これは、フランスが戦時中の労働力不足を補うため、
  就労しつつ留学させてあげる、という政策を取っていたためだが、
  行ってみたら戦争は終わり、彼は結局留学できず。

  そういう体験を経て、失望感から共産党員となり、ソ連に留学し、その後帰国する。
  彼は毛沢東を支持していて、毛が主席となる前に逮捕された時期も、連座で逮捕されている 
 
  そのあと毛が政権を取ると、彼は登用され、
  ソ連との激しいイデオロギー論争もし、信頼を得る

  しかし毛が大躍進の失敗の後、その尻ぬぐいとして彼と劉少奇が経済改革をし、評価されると、
  毛は彼を疎むようになる

  その後文革で、劉少奇は投獄され獄死、
  一方鄧小平も政権を追われた
  しかし、若いころ毛に協力したおかげか、彼自身は地方に左遷されただけで、党資格ははく奪されず。
  (ただし息子はひどい目にあったそうですが)
  
  彼は毛の死後、劉少奇もおらず、
  毛の後継者に指名された林彪が謎の死(毛の陰謀で殺されたという噂)、
  周恩来も政権を追われ、彼が実質的後継者となり、そこから復活

 …と、結構浮き沈みの激しい生涯です。
 彼は政権を取った後、
 ・毛の独裁を否定し、集団体制を取った 
 ・市場経済を導入した
 のですが、これは文革後、共産党がかなり壊滅状態にあったから、だそうです。
 国民は貧しく、共産党への支持も地に落ちていた。

 このため、一見民主的に見えるこの政策は
 「共産党への支持を復活させる」という意図があった。
 そして、そのためには経済の改革が最優先だ、と彼は考えた。
 そして、海外から技術を導入し、市場経済の導入も考えた。

 あくまで共産党を守るため、であって、
 資本主義や民主主義に共鳴したわけではない。
 その証拠に、民主化運動は容赦なく弾圧している。
 天安門事件の狂気じみた弾圧も、
 彼が文革で自分自身が弾圧された経験があり、「民主化すれば自分も抹殺される」恐怖が非常に強かったから、
 だという風に分析できる。

 ちなみにこのとき経済改革のブレーンになったのが日本人で、
 なぜ日本がモデルになったか、というと、
  地理的に近く、戦争体験から中国に同情的な国民が多かった、資源が少ない国の成長モデルだった、
 などの理由はあるのですが、
 注目すべきは
 「国民の所得格差が小さく、道徳心が強く、犯罪率が低い」
 これは彼が理想とする共産主義の社会に近いから、だったからだそうです。
 やはり筋金入りの共産党員だったんですね。

〇経済改革が与えた影響
 鄧小平が行った経済改革、その後の目覚ましい経済成長も、
 中国人の心情から分析できる。

 鄧小平は、共産党復活のため、「経済優先」を徹底した。このため
 ・労力をすべて経済に回すため、政治闘争を無くす→集団指導体制の徹底、長老を追い出す
 一見民主的に見える「集団指導体制」も、
 共産党を維持するため、経済優先にするため、だった。

 また、彼は国民に対し、経済優先、の潮流を意図的に示した。例えば
 ・対外、体内宣伝工作をし、国全体に「経済復活」の潮流を作る
  →海外視察の様子を敢えて放映、他国の経済の豊かさを見せて国民を刺激する
 ・地方政府どうしを競わせる
  →地方はインフラ整備、海外とのコネづくり、海外との合弁企業づくりなどに励むようになる
   地方が栄えれば、その市民も豊かになり、
   地方の政府の役人も中央に取り立てられる。
   そうすると、中央からの情報がその地方に入るようになる…
   という、正の循環ができるようになる(ただし、競争に敗れれば逆になる)
 ・中央政府内でも、専門性を重視する人事を行い
  5年ごとに高い目標を立て、達成させて競わせている

 このように、彼は経済的インセンティブを与えた。(彼の目的は、国民を豊かにするためではなく、共産党を維持するため、だが)
 そして、国民はその潮流を読み、自分も乗ろうと我先に争ったから、
 中国経済は目覚ましい発展を遂げた。
 一方で内部の競争はとても激しく、いつもトップを忖度し、ライバルを出し抜かねばならない、
 というストレスがある、という状況になっている

 あの目覚ましい中国の発展は、主席、国民もろとも、生きるか死ぬかの争いの結果だったんですね…

〇国民の変化
 では、国民はどう変化したか。

 経済面では、起業する人が増え、ライバルに勝とうとする人が増えた。
 ただ、やはり「父の動向」を伺う傾向であり、
 結局は中央とのコネ、政治家とのコネがある人が勝つ。
 というのは、中央が決める「潮流」に乗る人が勝てるからで、
 だから、中央の情報をいち早く手にしようとする。
 今の「一帯一路政策」に、みんなが先を争って乗ろうとするのも、このためなのだそうだ

 世論については、
 天安門事件後は特に、
 「党が武力を握っている限り、党に逆らうのは不可能」
 デモにしても、対外的な運動はOK、共産党批判のものはNGという暗黙の了解があるらしい。
 その代わり、当局がゴーサインを出すもの(対日デモなど)については
 日頃の抑圧の憂さを晴らすかのように、激しくなるのだそうです

 近年ではインターネットの検閲も進んでおり、
 AI技術を使った社会監視システムもできつつある。
 このため
 「国内政治の潮流に逆らったり、疑問を持ったりしたら辛い。
  思考を止めて、長いものに巻かれ、カネを稼いで生活を楽しみ、
  党の潮流に流されていくのが、一番精神的なパフォーマンスがいい」 
 「政治的に従順に、愚昧な市民になることが、うまく生きるコツ」
 という思考に陥りやすいのだそうです

 うーん、民主化はしそうにないですね…

〇歴代政権と習近平さん
 こうなると、今の主席、習近平の思考はどうなっているのか、が気になる。
 歴代の政権の流れを見ていくと、それが分かるそうです
 というわけで駆け足で主要政権を見ていくと、
 
 ・鄧小平政権
  市場経済を導入した鄧小平政権だが、
  天安門事件による経済制裁
  東欧の共産党政権の崩壊、ソ連解体などで一時期停滞する。
  しかし、1992年の南巡講話(経済特区のある広東を視察)、彼らを鼓舞する映像を見せることで、
  国民の心を集めていく

  彼はこの高揚感のまま、次の江沢民政権に政権を禅譲する

 ・江沢民(1992~)
  彼はガマガエルとか言われていたそうですが、
  「彼の時代は良かった」と懐かしむ人が多いのだそうです
  彼の時代は、計画経済から市場経済への移行が本格的に始まる
  ・欧米からの外貨導入
  ・欧米、西側諸国との関係改善
  ・ASEAN+3への参加も始まる
  ・高等教育の普及
  ・都市化が進み、テクノロジーが市民にも普及する
  日本で言ったら、高度経済成長期みたいな感じです。
  彼の時代の努力が、2008年のWTO加盟、北京五輪につながっていく

 ・胡錦涛(2002~)
  中国は「世界の工場」となり、GDPがさらに伸びる
  しかし、経済格差が増大し、北方では民族運動も起きるなど、問題も起き始める

  また、胡錦涛氏は穏健でまじめ、平和を好む、
  悪く言えば弱腰、弱いボスに見える方だったそうで、
  党中央の他の幹部、軍や地方などの「息子」たちは、
  彼が無能と見て、組織の利益のみを追求するようになってしまった

  党と本部の統制力、調整力が相対的に弱まり、
  対外政策の決定が各省庁、国有企業、地方政府などに移っていく
 
  …つまり、弱いボスだったため、プレイヤーたちが自由に行動するようになった。
  これは良い面、悪い面があり、
  経済的には、地方政府で大胆な政策を独自に立て、発展することもあり(広西チワン自治区はその例) 
  一方で軍が勝手な行動をする(海洋進出はその例)こともあったそうです。
  (↑この2例も、本文ではかなり詳しく取り上げられていました)

 ・習近平(2012~)
  さて、それを受けての現政権ですが、
  彼は胡錦涛の弱いボス像を見て、毛沢東のような強いボスを復活させた、と見ると分かりやすいらしい。

  一方で、毛沢東が個人崇拝を進めすぎ、
  内部組織を調整しなかったために混乱を招いた、ということも学んでいて、
  軍系統の組織と、国系統の組織の権限を自分に一元化し、両方を統制しようとしている
 
  このため、筆者から見ると「完全に中国の伝統に即している指導者」に見えるそうです。
  (筆者によれば、中国の理想的な指導者とは、 
   全体として家全体をしっかり統制し、全体を自分の力で動かし、
   個人のプレイヤーをつぶさない程度に抑え込む、という在り方)
  
  具体的には、
  ・「腐敗を無くす」という名のもと、政敵を抹殺、主席の任期も廃止し、
   毛沢東のような強い指導者になろうとしている
  ・国民に対しては、一帯一路など、「中国が世界を幸せにしている」とアピール
  ・「人類運命共同体の実現」という構想を内外に表明し、
   共産党の夢である「世界革命」的なものを実現させようとしている
  ・軍や国、党中央など「息子」たちに対しては、あまり自由を許していない
   自分が大きな潮流を決め、各メンバーが忖度して行動する、という方向性を取っている
   例えば、胡錦涛時代に行われた、地方政府による独自の開発は否定される方向だし、
   海洋進出した軍も、権力を主席に奪われている
  
  全体としては、強面でメンバーをしっかり押さえ、世界平和にも貢献しているボス、という感じらしい。

 ではこの後、中国社会は習近平のもと、どうなっていくのか。筆者の予測だと、
 ・個人の行動は党中央の意向に沿った、お利口さんなものになる
  今の政権のもとでは、全体に対する締め付けを強化していて、
  テクノロジーを駆使して、ネット社会でもリアル社会(監視カメラ)でも、監視を強めている

  また、海外の中国人に対しても、例えば一帯一路政策については
  「現地の社会の意思を尊重せよ、国際的な条約や慣例にも従え」
  という指示を出しており、
  企業が国際法や相手国の法律を侵さないような経済活動をするようになっている

 ・企業が国家におもねていく
  胡錦涛政権後半くらいから、経済活動への国の介入が進んでいるそうです。
  イノベーション自体は民間にどんどん自由にやらせ、
  お金は国家が援助する、その代わり海外投資の仕方や開発費の使い方については口を出す、
  というやり方。社会もこれを支持している。

 …これらがもたらす問題として筆者が指摘するのは
 ・他国との軋轢
  中国のやり方は、他国から見ると、
  市場経済制度を取っているはずなのに、
  国がお金を出して企業を支援し、自由市場主義をゆがめている、と受け取られる。

  しかし中国からすると、自由貿易を推進するために、
  国が企業をしっかり支えているんだ、となる。
  中国人からしても、自国民を守ってくれる強いボス、と映る。

  そもそも中国は、自由主義や民主主義を支持して市場経済を取り入れたわけではなく、
  共産党を守り国家を豊かにするために市場経済を取り入れているので、
  議論がすれ違ってしまう。

  中国は今、アメリカから強く非難されているが、
  中国の場合、また帝国主義が干渉してきた…となり、
  逆に国民は、強いボス、習近平を支持し、
  対立は深まる一方になる可能性の方が高いそうです。

 ・発展途上国への支援 
  中国は「強い中国」を示すため、発展途上国の支援も熱心である
  しかし彼らは政治体制や信条を問わずに支援するため、
  独裁国家、人道的にあんまりよくない国家を延命させる、
  ということにもつながっている。

  また、中国は無条件に人道的に支援するわけではなく、
  「リスペクトされたい」欲で支援しているわけで、
  その支援に政治的意図が反映される、ということはありうる。
 
 ・世代交代
  今のところ、習近平は権力を一元化し、息子たちを抑え込み、
  一方で国際ルールに乗っ取ったやり方を取ろうとしている。
  これ自体は悪くないが、彼も不死身ではないので、
  彼が引退した後どうなるのか、という問題は常に残っている

 ポスト習近平の時代の不安定さ、を指摘して、この本は終わっている感じでした。

〇感想など
 読んでいて、結構中国人って厳しい世界を見て生きているんだな、と思いました。

 例えば組織の中では
 「ボスが絶対、逆にボスに気に入られれば安泰」
 「ボス以外はライバル」
 「ボスが弱ければ虎視眈々と下克上を狙う」
 「潮流、空気を読まないといけない」
 ボスとしては
 「みんなににらみを利かせなければ、自分が殺される」
 
 周りはみんな敵、油断はできない感じで、
 世界がそういう風に見えているのかな、と思うと、ちょっと気の毒にも思う…
 (まあ、価値観は人それぞれだが、私はもう少しまったり生きたい)

 それから中国の歴史を見ると、不可解な出来事が多くて
 今まではびっくりすることが多かったんですが、
 彼らなりに理由のある判断なんだな、と分かりました。

 そして、この本を踏まえて考えたことですが、
 私は以前は中国は何で民主化しないんだろう、いつかすればいいのに、
 と思っていましたが、
 しかしもしかして、彼らは民主化しない方が幸せなんじゃないか、と思えてきた。

 というのは、国家としては「民主化する」というのは、屈辱なんじゃないか、と。
 彼らにとって西欧化、帝国主義に屈することであり、
 絶対に受け入れない気がする。
  
 また、個人としても、
 今までその時々のボスの言うことにひたすら従い、時流を読む、
 という近視眼的視点で生きているんだから、
 いきなり理想的なボスを選べ、と言われても困りそうな気がする。

 それよりも、ある程度押さえつけられはするかもしれないが、
 大まかな構想を決めてくれて、生活も保障してくれる賢いボスのもとで、
 経済活動、創造活動を自由にやる方が、
 彼らにとっては幸せなんじゃないか、と。
 (ロシア人にも、同じ傾向はあるように思う)
 
 なので、国際社会としては
 民主化をしろ、と迫るのはよろしくない、というか、
 中国のプライドの高さを考えたら逆効果で、余計意固地になりそう。

 それよりも共産党の中に民主的っぽい形を作る、というか、
 個人が自由に行動できる世界を作る、彼らなりの民主主義を育てた方がいい。
 そのために、中国の中に人道的な、ましなリーダーを育てる、
 という方向にした方がいいのではないか、という気がした。
 そして、そのリーダーの顔を立ててメンツを立ててあげる、
 という方向を取った方が、お互いウィンウィンの結果になるんじゃないかと思う。
 
 日本人の私からしたら、
 そんな風にみんなが敵、って考えてたらしんどいよ、
 助け合って、信頼し合った方が楽しいし、もっと大きなものが生み出せるよ…
 と言いたくなるのだが、
 世界にはいろんな視点があるんだな、と改めて感じた。

 でもそれを変えろ、というのも乱暴な話ですね。彼らのアイデンティティなのだから。
 個人レベルでも、いろんな性格の人がいて、 
 それぞれに良い面、悪い面があるように、
 それぞれの国々の考え方の癖にも、いい面悪い面があるんだろうと思う。
 それを理解しつつ、ここだけは守ろうね、ということを交わし合いつつ、
 うまくやっていけたらいいなと感じました。
 
 というわけで長くなりましたが、今回はこの辺で。